医薬品産業の現状と課題


世界の医薬品市場から見た日本の医薬品市場

世界の医薬品市場は、1995年(平成7年)~2008年(平成20年)までの間に、金額ベースで2.8倍に伸びました。

しかし、日本ではわずか1.3倍でした。

この伸びの差が、世界で20%を超えていたシェアを10%にまで下げています。


世界の医薬品市場シェアの推移

医薬産業政策研究所 2010 IMS Health. IMS World Reviewより改変

日本の市場の伸びが鈍いのは、医療用医薬品の薬価に対する国のコントロールが有効に機能している証です。

しかし、そのために、自由に経済活動を行いたい世界のグローバルメガファーマにとって、日本で新発売する魅力度が低下しています。


国際的な企業規模の違い

日本の企業の売上高は、世界大手製薬企業と比べ低い水準にとどまっており、国内最大手企業でも、世界においては売上高で12位(2012年)です。


少子高齢化に伴う課題

急速な高齢化の進行と平均寿命の伸長は老人医療費の増加を意味し、少子化の進展は保険料負担者の減少を意味します。

高齢化の進展と相まって、医療費の給付と負担の関係はますます難しい局面を迎えています。

また、生活の質の向上、衛生環境の高度化などとともに、疾病においても感染症から生活習慣病にその構造が大きく変わっています。


医療費抑制策と薬剤費の抑制

医療費適正化の推進と高齢者の医療制度の構築が国の大きな課題となっています。

特に医療費の適正化は医療費抑制を意味しています。

高齢化と医療技術の進歩により医療費は自然に増加する傾向にありますが、診療報酬引き下げによる救急医療、産科・小児科医療などにおける医療崩壊の実態を重くみた国は、2010年(平成22年)に改善につながる診療報酬改定を行いました。


医療費抑制策と薬剤費の抑制

医療用医薬品においても、過大な薬価差の縮小と医薬品の適正使用の推進に向けた施策により、薬剤費の伸び率が抑制され、薬剤費比率も低下しました。


アンメットメディカルニーズのへの取り組み

医療におけるアンメットメディカル二-ズとは、治療方法が確立しておらず、医師も患者も克服されることを希求しているさまざまな病気のことです。

そのような病気は発病のメカニズムが解明できていなかったり、メカニズムはわかってもそれを抑制する物質・方法がみつかっていなかったりすることなどから開発が難しいといわれています。

【国の取り組み】
国は医療上必要と考える医薬品についての要望を公募し、「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」において、開発の必要性を評価し、評価結果に基づき、企業に開発要請し、あるいは公募をして、これらの医薬品を患者に届ける仕組みづくりに取り組んでいます。

【医薬品産業の取り組み】
一般社団法人未承認薬等開発支援センターを設立し、開発資金援助事業を行い、ドラック・ラグの短縮化に取り組んでいます。


日本の基幹産業として期待される医薬品産業

日本の製薬産業は、高い研究開発力を活用することによって、これまでも世界の国々の患者に有用な医薬品を提供してきており、今後も貢献し続ける高い能力を備えています。

しかし、研究開発費は増加の一途をたどっており、効率的に回収して再投資を早めていくためには、これまで出遅れていた新興諸国など成長マーケットへの進出を高め、巨大市場である米国、単一国で2番目の市場規模となる日本とともにバランスのとれた企業展開が必要です。

もちろん、治療満足度の低い疾患への革新的な新薬を創出することがきわめて重要なことはいうまでもありません。

また、2010年(平成22年)から試行的に導入された新薬創出・適応外薬解消等促進加算の本格的かつ恒久的な実施も、日本の医薬品産業の国際競争力を高めていくうえで重要です。