医薬品流通と医薬品卸の機能と役割


医療用医薬品の流通の特殊性

医療現場では、患者さんには薬剤選択の能力と権限がほとんどなく、医師のもっている高い専門性に委ねられています。

医療用医薬品は、公的皆保険制度の中で診療報酬の一部に組み込まれ、薬価が実質的な上限価格として機能している状況下での流通です。

医療機関と医薬品卸は継続的な取引関係にあります。

医薬品業界独特の慣例として、必要とされる医薬品をまず納入し、その上で価格交渉をするという席取り的な取引が行われています。

また、医薬品は生命関連商品であることから、安定的かつ迅速に供給しなければなりません。


医薬品卸の法的位置づけ

医薬品卸とは、法律上は「卸売販売業」として都道府県知事の許可を受けて、営業所を構え、管理薬剤師の管理下で薬局および医薬品販売業者または医療機関等に対してのみ医薬品を販売する業者のことをいいます。

医薬品卸の構造設備には基準があります。

医薬品を保管する設備の面積は、原則としておおむね100㎡以上が必要であると規定されています(薬局等構造設備規則)。


医薬品卸の機能と役割


役割

製薬企業と医療機関の間に入って、双方の利益を調整。

地域に密着して多くの製薬企業の医薬品を取り扱うことで、販売と代金回収を効率的に行います。


物流機能

多くの製薬企業の製品をまとめて保管管理し、医療機関等からの注文を受けて、医療機関ごとに医薬品を取りまとめ、届けます。

災害時の緊急配送や、新型インフルエンザの流行に対応したワクチン配送などの危機管理流通を含みます。

地下鉄サリン事件にスズケンが新幹線を使い解毒薬のパムを全国からかき集めたのは有名な話です。
注文を受けるにあたっての価格交渉、代金の請求と代金回収を行います。

他の業界であれば製造メーカーも価格交渉を行うことがあると思います。
しかし、医薬品メーカーは、医療機関と価格交渉をすることはできません。


情報流機能

医薬品にかかわるさまざまな情報を収集・提供します。

生物由来製品の医療機関等への販売情報を、当該製品を製造販売する製薬企業に提供することが義務づけられています。